それはそれはとても朱い日…とても綺麗な茜空。

空というまっさらな和紙に真っ朱な染料を零したかのような…


そして眼下に広がる景色も真っ朱に染められていた。
無数に転がる仲間達の亡骸…自分が握り締めている刀…そして足元に横たわる友の姿、
全てが一瞬に朱く染まった。

その場に一人ぽつんと佇む少年も―――


黒と白の世界のほぼ中央に位置する海に囲まれた島国『日本国』。
その『日本国』の中心とも言える都…抻都(しんと)。





この国では、妖怪が人間と対等な存在であり外つ国の様に吸血鬼が表舞台に出る事はない。
夜の闇に紛れる存在として恐れられている部分が多い。

よって『日本国』に住む吸血鬼たちは、一般世間から少し間を置いて生き延びていた
…夜の帳がおりた刻から活動する隠密や忍、遊郭、陰間など。


その隠れた存在でもある吸血鬼で特に支配権力の大きさと言えば―【真田家】

帝や将軍からの裏の勅命、暗殺など吸血鬼という闇の住人の特性を生かして様々な命を無言無情で執行する。
そんな役目を担っている、国に必要な闇の存在が「真田家」なのだ。
剣術はもとより忍術を駆使していかに相手を素早く抹殺するか…
そんな吸血鬼の集まりである「真田家」の当主は、真田柾之(さなだまさゆき)。

長き歴史に渡り日本国の裏の闇を走り抜けてきた吸血鬼。
その真田家は、世襲制ではなく…養子に後を継がせる掟になっている。

しかし柾之自身に子供がいない訳ではない。いくら闇に生きる吸血鬼とは言え、我が子は可愛いもの。
後継ぎには殺す事を躊躇わない、情なども捨てた者がならなくてはいけない。躊躇いが生じた時こそ死が待っている。
そんな世界に我が子を送る事を拒んだ柾之は、
養子なら情などに揺らぐ事なく厳しく暗殺者に育て上げる事が可能と掟を作った。

そして、より強い後継ぎを捜す為…一般世間から外れ生きるのがやっとの生活を強いられている貧しい吸血鬼の子供達を集めた。
遊女の子供やら陰間で体を売る子、罪人の子供、堕ちた武家、御家人、旗本の子などを
国の為に働いてもらうと大金を家族に渡し…買い集めるのだ。

この時代、国の仕事をさせてもらえると聞けば、なんの疑いもなく我が子を送り出す親がほとんどだった。



そしてまた32人の子供達が真田家に集められた。
その中に…背がまだ伸びきらない黒髪の少年と歳のわりには背が高く細身な紅柄色髪の少年がいた。

これを運命というには残酷だが…偶然と言うには程遠い…
黒と白の世界は、いつから運命の歯車が歪んでしまったのだろうか。



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朱の絆−序の章−